百三十年を、そのまま運んでまいりました。

店内の木の扉、柱、円卓、提灯。そのほとんどが中国から船で渡ってきたものです。趙記老舗が福岡でお出ししているのは、料理だけではありません。

一族が守り継いできた台所

一八九五年、清の光緒二十一年。初代・愛新覺羅振国が、中国東北の地に趙記老舗を興しました。以来、二代・庭范、三代・劉氏、四代・乾満、そして五代目・愛新覺羅元海へ。清朝を打ち立てた満洲族の宮廷に伝わる料理を、書き残すことなく、厨房から厨房へ、手から手へと受け継いでまいりました。四代目と五代目は、ともに無形文化遺産の伝承人に認められております。

料理の名が、そのまま清朝の名簿でございます

「ドルゴン肉蒸し」は摂政王ドルゴンに、「ホンタイジミックス野菜」は第二代皇帝ホンタイジに、「皇太后木綿豆腐の煮込み」は皇太后に、「正黄旗 地三鮮」は八旗の筆頭・正黄旗に。名を聞けば、どの時代の、どなたの食卓にあった品かが分かる。それが満洲宮廷料理でございます。八大金剛菜と呼ばれる八つの品は、一六三三年、満洲人が関を越える前から伝わる古い料理でございます。

はじめて海を渡る

中国では大連・瀋陽・ハルビン・天津に、十を超える店を構えております。二〇二五年十一月、はじめて国境を越えました。その最初の一歩が、福岡・大名でございます。東京でも大阪でもなく福岡を選んだ理由は、この街の食の文化に、私どもの料理が根を下ろせると考えたからです。

受け継ぐことを、認められております

趙記老舗の満族伝統料理は、二〇一四年六月に哈爾濱市の無形文化遺産(第四次)、二〇一六年三月に黒龍江省人民政府より省級無形文化遺産の指定を受けております。あわせて二〇〇六年五月、黒龍江省飲食文化研究会ならびに哈爾濱市烹飪協会より「烹飪世家」の認定を頂戴いたしました。現在は、国家級無形文化遺産伝承人の認定を申請しております。

店主より

「利益を追い求めるのではなく、伝統と文化を残していきたい」。それが、この街に店を開いた理由でございます。

歩み

  1. 1895清・光緒二十一年。初代 愛新覺羅振国が中国東北にて創業
  2. 五代振国 ― 庭范 ― 劉氏 ― 乾満 ― 元海
  3. 2006「烹飪世家」の認定(黒龍江省飲食文化研究会・哈爾濱市烹飪協会)
  4. 2014哈爾濱市の無形文化遺産に指定(第四次)
  5. 2016黒龍江省の省級無形文化遺産に指定
  6. 十店舗大連・瀋陽・ハルビン・天津に展開
  7. 2025.11福岡・大名に初の海外店を開店
四代目・愛新覺羅乾満と、五代目・現店主。中国にて
五代目・愛新覺羅元海。清・光緒年間の扁額の下で
中国の店に掛かる先祖の肖像。満洲語の看板とともに